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前理事長の不正に関する第三者委員会の調査報告書について(社会福祉法人桃林会)

不正関係

 前理事長による簿外借入等の不正が発覚した大阪府摂津市社会福祉法人桃林会のホームページに第三者委員会の調査報告書と対応方策が掲載されているので紹介しておきます。

 前理事長の不正に関する第三者委員会の調査報告書について(社会福祉法人桃林会)

 報告書では12億7257万1000円の損害が認定されています。

 気になったのは、社会福祉法人大阪府社会福祉協議会の「自主監査」事業で桃林会の「自主監査」を行った監査法人の責任についての記載です。

 調査報告書では、監査法人は金融機関に対して残高確認を行っていなかったので、前理事長の不正経理は発見されなかった。これは監査法人が職業的専門家として当然に払うべき正当な注意義務を憐怠していたと考えられ、民事上の責任が生じるか慎重に検討を要すると記載されています。

 この指摘は一見まっとうなように見えます。しかし、監査法人が行っていたのは「自主監査」と呼ばれるもので、公認会計士が行う財務諸表とは似て非なるもののようです。

 では「自主監査」とは何かというと以下のホームページに「監査」と「自主監査」を対照した記載がありました。

 自主監査事業(大阪府社会福祉協議会)

 非常に簡単な記載ですが、「自主監査」は「監査手続は実施しない」と明記してあります。つまり、金融機関への残高確認などはしないことが前提のようです。

 実際に何をしているのかはよくわかりませんが、おそらく質問等によってチェックリストを作成し、不備な項目が明らかになった場合、その改善についてアドバイス等をしていたのではないでしょうか。社会福祉協議会を通じて、社会福祉法人の内部統制の整備等に協力していたというのが本当のところのような気がします。

 ちなみに、現況報告書によれば、平成27年度に外部監査費用として監査法人には1502千円、税理士には3758千円支払ったと記載されています。現況報告書の記載要領は以下の通りですから、①の財務諸表監査ではなく②の会計管理体制の整備状況の点検等に対応する業務が「自主監査」なのだと思われます。

 「外部監査」欄については、「社会福祉法人の認可について(厚生労働省通知)」に規定する「財産状況等の監査」を指し、具体的には、①公認会計士法に基づき公認会計士又は監査法人が行う財務諸表の監査、②公認会計士又は監査法人、税理士その他の会計に関する専門家が行う会計管理体制に整備状況の点検等、③財産状況以外事項(法人の組織運営・事業等)の監査が含まれるものであること。

 契約にもよるとは思いますが、そもそも公認会計士が実施する財務諸表監査ではありませんし、「監査手続は実施しない」と合意されているのであれば、金融機関への残高確認を実施しないことをもって、正当な注意義務を憐怠していたということにはならないと思います。今後どのような結論になるのか注目です。