開示関係
社会福祉法人制度改革の一つの柱が事業運営の透明性の向上でした。これに対応して社会福祉法人には一定の情報公開が義務付けられています。
そろそろ決算も一段落しましたので、今一度、最低限何を公開することが求められているか見直してみたいと思います。
公表すべき資料は、厚生労働省作成の「法第59需要の規定により社会福祉法人が届出を行う書類等の公表について」という資料にまとめられています。
法第59需要の規定により社会福祉法人が届出を行う書類等の公表について(厚生労働省)
この資料の右側に「公表事項」という欄があります。この中の〇印の資料を公表する必要があるわけですが、公表方法が「システム」と記載されているものについては、WAM NETの「財務諸表等電子開示システム」で公表されるので、各法人のホームページで敢えて公表する必要はありません。
結局、公表方法に「法人HP等」と記載されている以下の資料はシステムによる公表が行われませんので、法人のホームページで公開する必要があります。
・定款
・役員等名簿
・報酬等の支給基準
(参考)社会福祉法人が作成する書類の公表について(東京都)(Word:22KB)
これだけなら簡単ですね。忘れずに公表するようにしてください。
ところで、もう一つ重要な点があります。それは、現況報告書を法人のホームページにおいて自主的に掲載する際の注意点です。
「法第59需要の規定により社会福祉法人が届出を行う書類等の公表について(厚生労働省)」をもう一度よくご覧ください。現況報告書は、2ページ目の「事業の概況その他省令で定める事項を記載した書類(法第45条の34第1項第4号)」のことです。
この書類の公表事項をよく見ると〇印の下に(一部×)と記載されています。実はこれが重要で、現況報告書の中にも一部非公開となる部分が存在します。
WAM NETの「財務諸表等電子開示システム」で公表されている現況報告書をよくご覧いただくとわかりますが、非公開となっている部分が存在します。社会福祉法人の皆様も入力したはずなのに、塗りつぶされて見えなくなっている項目があるはずです。
社会福祉法施行規則第10条3項によれば「法人の運営に係る重要な部分に限り、個人の権利利益が害されるおそれがある部分を除く。」となっていますので、個人の権利利益が害されるおそれのある項目などは非公開とされており、具体的には以下の項目が非公開になっています。
公表されている現況報告書等データについて(WAM NET「財務諸表等電子開示システム」)
2.当該会計年度の初日における評議員の状況
(3-2)評議員の職業
(3-4)評議員の所轄庁からの再就職状況
(3-5)他の社会福祉法人の評議員・役員・職員との兼務状況3.当該会計年度の初日における理事の状況
(3-6)理事の職業
(3-7)理事の所轄庁からの再就職状況
(3-11)理事報酬等の支給形態4.当該会計年度の初日における監事の状況
(3-2)①監事の職業
(3-2)②監事の所轄庁からの再就職状況5.前会計年度・当会計年度における会計監査人の状況
(1-2)前会計年度の会計監査人の監査報酬額(円)
(2-2)当会計年度の会計監査人の監査報酬額(円)10.前会計年度の会計監査の状況
(2)会計監査人による監査報告書11.前会計年度における事業等の概要
- (1)社会福祉事業の実施状況
⑨社会福祉施設等の建設等の状況(当該拠点区分における主たる事業
(前年度の年間収益が最も多い事業)に計上)11.前会計年度における事業等の概要
- (2)公益事業
⑨社会福祉施設等の建設等の状況(当該拠点区分における主たる事業
(前年度の年間収益が最も多い事業)に計上)11.前会計年度における事業等の概要
- (3)収益事業
⑨社会福祉施設等の建設等の状況(当該拠点区分における主たる事業
(前年度の年間収益が最も多い事業)に計上)14.ガバナンスの強化・財務規律の確立に向けた財務状況
④費用[年額](円)15.その他
全て
どこかの有名企業の社長に評議員になってもらっている場合は、職業欄に「××株式会社代表取締役社長」なんて書いてあると箔がつくので、敢えて公開したいケースもあろうかと思いますが、原則的には公開する必要がありません。
つまり、各法人のホームページで自主的に現況報告書を公表する場合、注意しないと、非公開にしてもいい項目で本当は公開したくない項目を公開しているかも知れません。
各社会福祉法人のホームページで自主的に公表されている現況報告書をいくつか見ましたが、非公開項目を隠しているものは見当たりませんでした。
意識して公開しているのであれば構いませんが、そうでない場合は、今一度、ホームページで公開している現況報告書を見直す方が良いかもしれません。