社会福祉法人制度改革によって、改正法に基づく評議員、理事、監事、会計監査人の機関の選任が必要です。会計監査人は大きな法人だけですが、その他はすべての法人で必要です。
形式的には、評議員の選任が最初に必要になりますので、どのような手順になるか考えてみました。頭の中で考えた順番で記載していますが、実際には同時並行で進める部分も多いと思います。
長いのでリンク目次も掲載しておきます。
1.評議員の員数
評議員は理事の員数+1名以上にする必要があります。理事の員数は6名以上と定められましたので、最少でも評議員は7名必要になります。
【改正法第40条第3項】
評議員の数は、定款で定めた理事の員数を超える数でなければならない。
【改正法第44条第3項】
理事は六人以上、監事は二人以上でなければならない。
ただし、平成27年度のサービス活動収益が4億円以下の小規模な法人は改正法施行から3年間は評議員の員数は4名以上とされています。
【改正法附則第10条】
この法律の施行の際現に存する社会福祉法人であって、その事業の規模が政令で定める基準を超えないものに対する新社会福祉法第四十条第三項の規定 の適用については、施行日から起算して三年を経過する日までの間、同項中「定款で定めた理事の員数を超える数」とあるのは、「四人以上」とする。
【平成28年6月20日付事務連絡「社会福祉法人における評議員の員数の経過措置に係る一定の事業規模について」】
「社会福祉法人制度改革の施行に向けた留意事項について」(平成28 年6 月20 日付厚生労働省社会・援護局福祉基盤課事務連絡)において別途お知らせすることとした評議員の員数の経過措置に係る一定の事業規模については、平成27 年度における法人全体の事業活動計算書におけるサービス活動収益の額が4億円を超えない法人とする予定です(平成28 年度以降のサービス活動収益の額は考慮しません。)。
2.評議員の人選
法人その他欠格事由に該当する場合は評議員になれません。
【改正法第40条第1項】
次に掲げる者は、評議員となることができない。
1 法人
3 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
4 前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
5 第56条第8項の規定による所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員
改正前の評議員は理事や職員の兼務が認められていましたが、改正後は理事、監事、職員との兼務は禁止されています。
【改正法第40条第2項】
兼務していた評議員がそのまま新制度の評議員になるためには、改正法の施行日まで(平成29年3月31以前)には兼任していた理事を辞任しなければなりません。また、これにより理事の員数が欠ける場合は代わりの理事を選任する必要があります。
【平成28年6月20日付『「社会福祉法人制度改革の施行に向けた留意事項について」に関するFAQ』(以下FAQという)より抜粋】
問13 現職の理事が新制度の評議員に就任する場合には、理事を辞職しなければならないのか。
(答)
1.新制度の評議員については、牽制関係を適正に働かせる観点から、理事との兼務は認められていない(法第40 条第2項)。このため、現職の理事が施行日に評議員に就任する場合には、施行日の前日までに理事を辞職する必要がある。
2.当該理事が辞職することにより、施行日以後法律又は定款で定めた理事の員数が欠けることとなる場合には、施行日までに代わりの理事が就任しなければならない。
この場合、当該代わりの理事の任期は、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までとされる(改正法附則第14 条)ため、4月1日から3月末までを会計年度としている法人で、定時評議員会を毎年6月末に行っている法人を例にすると、その任期は、平成29 年6月末までとなる。
3.代わりの理事については、施行日以後最初に招集される定時評議員会において新制度の理事として再任されうる者を、あらかじめ選任しておくことが望ましいと思われる。
現職員は評議員になれませんが、退職後1年経過した元職員は評議員になることができます。
【FAQ】
問17 当該法人の職員であった者は評議員となることができるか。
(答)
1.可能である。ただし、牽制関係を適正に働かせるため、退職後、少なくとも1年程度経過した者とすることが適当である
他の評議員や役員と特殊の関係のある者は評議員になることができません。
【改正法第40条第4項】
評議員のうちには、各評議員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各評議員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。評議員は、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
【同第5項】
評議員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。
記帳代行業務や税理士業務などを請け負っている顧問税理士等も評議員になれませんが、アドバイスや助言のみの場合は評議員になることができます。
【FAQ】
問21 当該社会福祉法人の顧問弁護士、顧問税理士、顧問会計士は評議員となることはできるか。
(答)
1.法人運営の基本的事項を決定する者と業務執行を行う者を分離する観点から、評議員が業務執行に該当する業務を行うことは適当でない。
2.このため、例えば、法人から委託を受けて記帳代行業務や税理士業務を行う顧問弁護士、顧問税理士又は顧問会計士については、評議員に選任することは適当でない。一方、法律面や経営面のアドバイスのみを行う契約となっている顧問弁護士、顧問税理士又は顧問会計士については、評議員に選任することは可能である。
3.定款変更
評議員を選任するためにはするためにはまず、定款変更をしてその選任方法を定めることが必要です。
【改正法第39条】
選任の期限は改正法の施行日までとなっていますので、新制度の評議員は平成29年3月31日以前に選任しておく必要があります。その選任の効力発生は施行日である平成29年4月1日です。反対に、施行日前の現任の評議員の任期は平成29年3月31日に満了となります。
【改正法附則第9条】
施行日前に設立された社会福祉法人は、施行日までに、あらかじめ、新社会福祉法第39条の規定の例により、評議員を選任しておかなければならない。
2 前項の規定による選任は、施行日において、その効力を生ずる。この場合において、新社会福祉法第41条第1項の規定の適用については、同項中「、選任後」とあるのは「、社会福祉法等の一部を改正する法律(平成28年法律第21.号)の施行の日以後」と、「を選任後」とあるのは「を同日以後」とする。
新制度の定款は、施行日までに変更し、所轄庁の認可を受ける必要があります。その効力が発生がするのは施行日とされています。
【改正法附則第7条】
この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に設立された社会福祉法人は、施行日までに、必要な定款の変更をし、所轄庁の認可を受けなければならない。
2 前項の認可があったときは、同項に規定する定款の変更は、施行日において、その効力を生ずる。
4.選任委員会の設置
評議員の選任方法については、選任委員会を設置することが適当とされています。選任委員会による方法は例示されているだけですが、これ以外の方法は示されていません。
【平成28年6月20日付事務連絡「社会福祉法人における評議員の選任及び解任方法について」より抜粋】
定款で定める評議員の選任・解任の方法としては、評議員の構成が特定の関係者に偏ることがないよう、例えば、以下の例のように、法人関係者でない中立的な立場にある外部の者が参加する機関を設置し、この機関の決定に従って行う方法が考えられます。
(例)
(評議員の選任及び解任)
第○条 この法人に評議員選任・解任委員会を置き、評議員の選任及び解任は、評議員選任・解任委員会において行う。
2 評議員選任・解任委員会は、監事○名、事務局員○名、外部委員○名の合計○名で構成する。
3 選任候補者の推薦及び解任の提案は、理事会が行う。評議員選任・解任委員会の運営についての細則は、理事会において定める。
4 選任候補者の推薦及び解任の提案を行う場合には、当該者が評議員として適任及び不適任と判断した理由を委員に説明しなければならない。
5 評議員選任・解任委員会の決議は、委員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
ただし、外部委員の○名以上が出席し、かつ、外部委員の○名以上が賛成することを要する。
選任委員会は常時設置とし、選任委員の任期を決める必要があります。
【FAQ】
問1 評議員選任・解任委員会を置く場合は、常時設置としなければならないのか。それとも、必要に応じその都度設置することができるものなのか。
(答)
1.評議員が欠けた場合等に迅速に対応できるよう、常時設置することが適当である。
問2 評議員選任・解任委員会を常時設置する場合、委員の任期を設ける必要はあるか。
(答)
1.常時設置する場合には、理事や評議員の任期を参考に委員の任期を設けることが適当である。
5.選任委員の人選
選任委員は少なくとも3名以上で中立的な外部の者を1名以上含めることが必要です。監事と職員が選任委員になることはできますが、理事や評議員は選任委員になることはできません。
【FAQ】
問8 評議員選任・解任委員である事務局員に法人の職員がなることは可能か。
(答)
1.事務局員に法人の職員(介護職員等を含む。)がなることは可能である。
問9 評議員選任・解任委員会において、監事・事務局員・外部委員を委員にしないことは可能か。
(答)
1.監事・事務局員を委員としないことは可能であるが、評議員選任・解任委員会が法人関係者でない中立的な立場にある外部の者が参加する機関であることから、少なくとも外部委員1 名を委員とすることが適当である。
問10 理事、評議員は評議員選任・解任委員になることは可能か。
(答)
1.理事については、理事又は理事会による評議員の選任・解任を禁止した法第31 条第5項の趣旨を踏まえ、認められない。
2.評議員については、自分を選任・解任することになるため、適当ではない。
問11 評議員選任・解任委員の人数に制限はあるのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員の人数については、法人の規模等に応じて、各法人において判断することとなる。
2.ただし、評議員選任・解任委員会は合議体の機関であることから、3 名以上とすることが適当である。
6.選任委員の選任
選任委員の人選が終わったら理事会で選任委員を選任する必要があります。
【FAQ】
問5 評議員選任・解任委員会の委員は誰が選任するのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員は、法人運営の状況を把握し、業務執行に関し責任を負う理事会において選任する方法が考えられる。
2.この場合、特定の理事が委員を選任するとした場合、偏った委員構成となるおそれがあるため、理事会において決定することが適当である。
7.選任委員会の開催(評議員の選任)
選任委員会の招集は理事会で決定し、理事が行います。選任委員会に理事が出席して説明や質疑応答することは可能ですが、議決に加わることはできません。当然、議事録も作成して10年間保存する必要があります。
【FAQ】
問3 評議員選任・解任委員会は誰が招集するのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員会の招集は、法人運営の状況を把握し、業務執行に関し責任を負う理事会において決定し、理事が行うことが適当である。
問4 評議員選任・解任委員会の議事録を作成・保存する必要があるか。
(答)
1.適正な手続により評議員の選任・解任を行ったことについて説明責任を果たすことができるよう、議事録を作成することが適当である。
2.その際、出席委員又は委員長を置く場合には委員長の署名又は押印がされていることが適当である。
3.また、評議員選任・解任委員会の議事録は、評議員会や理事会の議事録と同様に、10年間保存しておくことが適当である。
問7 評議員選任・解任委員会に理事は出席できるのか。
(答)
1.理事又は理事会が評議員を選任する旨の定款の定めは無効(法第31 条第5項)とする法の趣旨から、理事が評議員選任・解任委員会の議決に加わることは認められず、議事に影響を及ぼすことは適当でない。
2.他方、評議員選任候補者等の提案は理事会の決定に従い、理事が行うことが通常と考えられることから、その提案の説明・質疑対応のために理事が出席することは可能である。
8.評議員の任期
評議員の任期は、選任後4年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までですが、定款の定めによって、4年を6年まで伸長することも可能です。また、任期満了前に退任した評議員の補欠として選任された評議員の任期を退任した評議員の任期満了までとすることも可能です。
現任の評議委員と新制度の最初の評議員の任期は「3.定款変更」を参照してください。
【改正法第41条】
評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を選任後六年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで伸長することを妨げない。
2 前項の規定は、定款によつて、任期の満了前に退任した評議員の補欠として選任された評議員の任期を退任した評議員の任期の満了する時までとすることを妨げない。