社会福祉法人の会計情報

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社会福祉法人の財務分析 経営姿勢、利益率大きく左右 松山幸弘 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(日本経済新聞)

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 本日の日経ですが、以下のようなコラムが掲載されています。

 社会福祉法人の財務分析 経営姿勢、利益率大きく左右 :日本経済新聞

 財務諸表のデータベースから全ての財務諸表をダウンロードしたそうです。資金も人材も豊富なシンクタンクならではの分析だと思います。財務分析については、なるほどなと思える数値が出ています。

 財務諸表の有料記事なので詳しく紹介できせんが、気のなる視点がいくつかありましたので紹介いたします。
 
 まず、財務諸表の不備について・・・
 
 「集計作業を始めてまず驚いたのは、約750の社福がデータベース作成に必要な財務諸表を提出していないことだった。また724の社福の貸借対照表が貸方と借方が一致しないアンバランスシートだったことにも驚かされた。こうした事態が提出期限から1年以上たった現在でも是正されていないことに対し、社福と所轄庁の双方に法律と会計原則を順守する意識が低いと批判が出てもおかしくない。」
 
 確かに貸借不一致は見かけますね。私も気になっていたのですが、提出していないのは、問題のある法人なのか、頑固な理事長のいる法人なのか、ネット環境が無い法人なのかよくわかりません。放置されているのも良くないと思います。

 済生会は日本一の社福だというのは以前記事にしましたが、次は聖隷福祉事業団なのでしょうか。
 
 「集計した1万9855法人の16年度の収入は10兆円、経常増減差額は3484億円、平均経常利益率は3・5%だった。社福の業績を考察する場合、全国展開して事業規模が格段に大きい済生会(収入6318億円、経常利益率マイナス0・9%)と聖隷福祉事業団(同1098億円、4・3%)を・・・」 

「集計した1万9855法人の16年度の収入は10兆円、経常増減差額は3484億円、平均経常利益率は3・5%だった。社福の業績を考察する場合、全国展開して事業規模が格段に大きい済生会(収入6318億円、経常利益率マイナス0・9%)と聖隷福祉事業団(同1098億円、4・3%)を・・・」 

 やはり出てくるのは社会福祉法人に対する課税です。これによって財務諸表も正常化されるとの論調です。
 
 「黒字の社福に低率課税することを提案したい。黒字社福の利益合計は4649億円だから税率5%でも相当な財源を確保できる。税務署の監視が入ることにより、財務諸表が正常化されるという副次効果も大きいと期待される。」

 国の社会福祉政策の一端を担っている社会福祉法人に課税することについては、これまで様々な議論がなされて来ました。

 今般の制度改革で課税すべきという主張に反論するために、将来の施設の建替費用などを考慮した社会福祉充実残高を算定し、余った法人は社会福祉充実計画によって、どのように使うかキチンと説明しているはずですが、この記事には社会福祉充実残高や充実計画に関しては何も触れられていません。
 
 すべての財務諸表を入手し、客観的な数値から分析した結果として、課税すべきというのは、ある意味正しい主張とも考えられます。しかし、今般の制度改革のひとつの柱である社会福祉充実残高や充実計画については何も触れずに課税論を主張しているという点では、従来通りの主張の繰り返しであり、説得力に欠けるのではないかと感じます。
 
 いずれにせよ、大変興味深く、社会福祉法人の皆様に大きく影響する記事なので、一読することをお勧めします。