少し前ですが、以下の文書も厚生労働省から出ていますので掲載しておきます。
社援基発0601 第1号平成28年6月1日都道府県
各 指定都市 民生主管部(局)長 殿
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長(公印省略)
社会福祉法人の「地域における公益的な取組」について
社会福祉法等の一部を改正する法律(平成28 年法律第21 号。以下「平成28年改正法」という。)が平成28 年3月31 日に公布され、その趣旨及び内容については、「社会福祉法等の一部を改正する法律の施行について」(平成28 年3月31 日社援発0331 第41 号社会・援護局長通知)においてお示ししたところです。今般、平成28 年改正法第24 条第2項のいわゆる「地域における公益的な取組」について、その趣旨等を下記のとおりお示しするので、御了知の上、管内関係機関、関係団体への周知等よろしくお取りはからい願います。
また、都道府県におかれましては、貴管内の市(指定都市及び中核市を除き、特別区を含む。)に対して周知いただきますようお願いいたします。
なお、「社会福祉法人の「地域における公益的な取組」について」(平成27年4 月17 日社援基発0417 第1 号厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知)は廃止します。
本通知のうち、3(3)については、地方自治法(昭和22 年法律第67 号)第245条の9 第1 項及び第3 項の規定に基づく都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)が法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準として発出することを申し添えます。
記
1 「地域における公益的な取組」を行う趣旨
社会福祉法人(以下「法人」という。)については、平成12 年の社会福祉基礎構造改革の際に、社会福祉法第24 条(経営の原則)において法人の本旨に関する規定を整備したところですが、今般、平成28 年改正法第24 条第2項で規定された「地域における公益的な取組」に係る責務については、法人の本旨から導かれる法人が本来果たすべき役割を明確化したものです。
2 「地域における公益的な取組」の内容
(1) 平成28 年改正法第24 条第2 項の要件
平成28 年改正法第24 条第2 項は、「社会福祉法人は、社会福祉事業及び第26 条第1 項に規定する公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。」としています。
当該規定に明記された「地域における公益的な取組」の要件は、
① 社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される福祉サービスであること
② 日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対する福祉サービスであること
③ 無料又は低額な料金で提供される福祉サービスであること
です。
上記の法律上の要件は、法人が他の事業主体では困難な福祉ニーズに対応することを明記したものであり、上記③の要件である「無料又は低額な料金で提供される福祉サービス」の実質的な意義は、既存の制度の対象とならず、公的な費用負担(※)がない福祉サービスを提供することです。
※ 委託事業又は補助事業による事業費全額についての公費負担のことをいいます。
(2) 「地域における公益的な取組」の要件の意義
「地域における公益的な取組」は、以下の全ての要件を満たす必要があります。
① 社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される福祉サービ
スであること
社会福祉法における公益事業とは、社会福祉事業以外の社会福祉を目的とする事業であって、社会福祉と関連のない事業は該当しません。
したがって、「地域における公益的な取組」は、社会福祉を目的とした福祉サービスとして提供される必要があります。
② 日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対する福祉サービスであること
福祉サービスを受ける者としては、「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者」と規定されており、心身の状況や家族環境等の他、経済的な理由により支援を要する者が該当します。
③ 無料又は低額な料金で提供されること
無料又は低額な料金で提供される福祉サービスとは、多様な事業主体が福祉サービスの実施主体として参入する中、法人は、社会福祉事業の主たる担い手として、税制上の優遇措置などの公的な助成が行われているものであり、高い公益性を有する特別の法人に求められる役割として、地域社会に積極的に貢献していくための事業等です。
したがって、当該取組は、直接的な費用が発生する事業等を行う場合、その費用を下回る料金を徴収して実施する事業、又は料金を徴収せずに実施する事業等が該当します。
なお、既存の制度の対象となり、公的な費用負担(※)がある場合は、無料又は低額な料金で提供する福祉サービスとはいえず、「地域における公益的な取組」には該当しません。
※ 委託事業又は補助事業による事業費全額についての公費負担のことをいいます。
「地域における公益的な取組」の該当性を判断する際の参考となる考え方は[別添1]のとおりです。
3 「地域における公益的な取組」実施の際の留意事項
(1) 「地域における公益的な取組」と平成28 年改正法第55 条の2(平成29年4 月施行分)に規定する「地域公益事業」の関係について([別添2]参照)
「地域における公益的な取組」は、全ての法人の責務として規定したものであり、継続的に行われるものではない取組も含まれます。
一方、平成28 年改正法第55 条の2 に規定する「地域公益事業」は、社会福祉充実残額を保有している法人が、その財産を活用する社会福祉充実計画に位置付ける「事業」として規定しているものであり、社会福祉法第26 条に規定する公益事業に含まれるものです。
なお、平成28 年改正法第55 条の4 において、法人が社会福祉充実計画を作成する場合の検討順位は、第1に「社会福祉事業(職員処遇の充実を含む)」、第2に公益事業の中の「地域公益事業」、第3に「その他の公益事業」とされています。
(2) 定款上の取扱いについて
「地域における公益的な取組」のうち、継続的に行われるものではない取組については、従前の取扱いのとおり定款の変更を必要としません。
なお、公益事業のうち、規模が小さい事業の取扱いは以下の通知のとおりです。
「公益事業のうち、規模が小さく社会福祉事業と一体的に行われる事業又は社会福祉事業の用に供する施設の機能を活用して行う事業については、必ずしも定款の変更を行うことを要しないこと。」
(「社会福祉法人の認可について」(平成12 年12 月1 日障第890 号・社援第2618号・老発第794 号・児発第908 号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知) 別紙2 社会福祉法人定款準則第二一条(備考一))
(3) 所轄庁の指導監督について
「地域における公益的な取組」は、法人がその経営実態に応じて地域の福祉ニーズに対応するものであり、所轄庁は、法人に対して特定の事業の実施を強制するなど法人の自主性を阻害するような指導を行ってはならず、社会福祉法第61 条第1 項第1 号及び第2 号(事業経営の準則)を遵守することが必要です。
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)(抄)
(事業経営の準則)
第六十一条 国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者は、
次に掲げるところに従い、それぞれの責任を明確にしなければならない。
一 国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営す
る者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めないこと。
二 国及び地方公共団体は、他の社会福祉事業を経営する者に対し、その自主性
を重んじ、不当な関与を行わないこと。
三 (略)
2 (略)
(4) その他
社会福祉法人は、社会福祉事業を実施することを目的とする法人として、「地域における公益的な取組」を実施するものであり、「地域における公益的な取組」の実施に当たっては、社会福祉事業の適切な実施に影響が及ばないようにしなければなりません。
ついては、福祉各法に基づく基準や運営費等に係る取扱い(注)に則して実施することが必要です。
(注)
① 子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について(平成27 年9 月3 日府子本第254 号、雇児発0903 第6 号)
② 社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費の運用及び指導について(平成16 年3 月12 日雇児発第0312001 号、社援発第0312001 号、老発第0312001 号)
③ 障害者自立支援法の施行に伴う移行時特別積立金等の取扱いについて(平成18 年10 月18 日障発第1018003 号)
④ 指定障害児入所施設等における障害児入所給付費等の取扱いについて(平成24 年8 月20 日障発0820 第8 号)
⑤ 特別養護老人ホームにおける繰越金等の取扱い等について(平成12 年3 月10 日老発第188 号)
また、「地域における公益的な取組」については、各法人がそれぞれ主体的に実施することが求められますが、小規模な法人において、単独で実施することが困難であるような場合には、複数の法人で連携し実施することも考えられます。その場合、各法人は、単に資金拠出するだけではなく、その役員、職員が直接サービス提供に関わるなど実質的に事業等の実施主体となることが必要となります。
[別添1]平成28 年改正法第24 条第2項のいわゆる「地域における公益的な取組」の考え方について
○ 以下については、平成28 年改正法第24 条第2項のいわゆる「地域における公益的な取組」の該当性を法人等が判断する場合の参考として考え方を示すものであり、個々の取組については法人が地域の福祉ニーズを踏まえつつ、法律の趣旨(前記要件等)に則して判断する必要があります。
なお、
ア 「地域における公益的な取組」は、以下の例に限定されるものではないこと
イ 「地域における公益的な取組」に該当しない場合であっても、法人が行うことができる公益事業に該当する場合があること
を念のため申し添えます。
① 社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される福祉サービスであること
・ 地域の障害者、高齢者と住民の交流を目的とした祭りやイベントなど地域福祉の向上を目的とした活動は該当し得ますが、当該法人の施設・事業の入所者・利用者と住民との交流活動は、法人事業の一環として行われるものであり「地域における公益的な取組」には該当しません。
・ 環境美化活動や防犯活動は、法人が自主的に取り組むことが出来るものですが、地域社会の構成員として行う活動であり、「地域における公益的な取組」には該当しません。
② 日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対するものであること
・ 要支援・要介護高齢者に対する入退院支援などは該当し得ますが、自ら移動することが容易な者に対する移動手段の提供などは法人が自主的に取り組むことが出来るものですが、「地域における公益的な取組」には該当しません。
・ 子育て家族への交流の場の提供は該当し得ますが、地域住民に対するグラウンドや交流スペースの提供は法人が行い得るものですが、「地域における公益的な取組」には該当しません。
・ 家庭環境により十分な学習機会のない児童に対する学習支援を目的としたものは該当し得ますが、一般的な学力向上を主たる目的とした学習支援は法人が自主的に取り組むことが出来るものですが、「地域における公益的な取組」には該当しません。
③ 無料又は低額な料金で提供されること
・ 自治体の委託事業を受託して費用の補填を受けている場合は該当しませんが、法人独自に付加的なサービス提供を行っている場合は該当し得ます。
・ 法人が介護保険サービスに係る利用者負担を軽減するものについては該当します。